アドセンス2

2013年7月25日木曜日

国際政治史ー世界戦争の時代から21世紀へー ①

国際政治史ー世界戦争の時代から21世紀へー
佐々木雄太、名古屋大学出版会、2011

序章 20世紀と国際政治

国際社会と世界は同義ではない。国際社会とは、「主権国家を単位とする社会」をさす。17世紀後半に西欧で成立した国際社会が世界に伝播し、20世紀世界は国際社会になった。

国際社会に先立つヨーロッパはキリスト社会だったが、ルターの宗教改革とそれに次ぐ宗教戦争を経験し、ウェストファリア条約にて君主に宗教選択の自由を認め、領域における排他的な権利すなわち主権が認められることとなり国際社会は誕生した。

ウェストファリア体制での国際関係は主権を有するという均質な国家間での関係であり、諸国家の対外行動の基本動機は、国家利益、なかでも安全保障の追求にあった。

国家は安全保障の手段をまず国際法にもとめる。しかし、国内とはことなり超越的な審判者が不在のため、国際社会の絶対的な存在である主権をもつ国家は、約束である国際法に全面的な依存はせず、究極的に国力を手段としなければならない。さしあたっての政策は利害関係国との勢力均衡となるが、均衡は破られる可能性を秘めている為に、国家は利益実現の為の国力を、次第に力それ自体を目的にする。これがパワーポリティクスである。このような国際社会での平和とは諸国家の安全の算術的総和であり、国力の均衡に依拠する相対的平和にとどまる。


第一章 帝国主義の時代と第一次世界大戦

帝国主義の要因は多くの議論があるために、帝国主義に定義を与える事は困難であるがここでは「資本主義国家が、歴史のある段階で、国民国家の周りに、本来の国境を超えた広域支配権を確立しようとした動き」として近代帝国主義をさしあたって定義する。

19世紀末までに世界は列強の植民地にほぼ組み込まれた。広大な非ヨーロッパは国際社会に組み入れられたわけである。しかし、それで状況は膠着せず、国力の衰退国と、後発国の現れは再分割を要請した。


この背景には、不況と、電気、石油が可能にした第二次産業革命という経済的要因。民族国家の形成と民主主義的改革。経済権力と政治権力の結びつき、それによる独占資本による直接支配(介入主義国家)などの政治的要因があった。

ドイツ、オーストリア、イタリアの三国同盟、イギリス、フランス、ロシアの三国協商の軍事同盟の利害対立は全世界に及び火種はあちこちにあった。オーストリアとロシアの野心がバルカン半島で衝突し、ハプスブルク家の王子が暗殺されたサライェヴォ事件によりオーストリアがセルビアに宣戦布告しWW1は始まる。

ドイツの戦争目的
工業の急成長と政治、軍事のおくれが植民地保有の野心を強めた。特にイギリスから分け前を奪おうとしていた。軍備の増強により、軍部の政策決定の末戦争に突入

イギリスの戦争目的
ドイツによる中立国ベルギーへの侵略を非難し、ドイツの専制支配に対する、戦争を終わらせる為の戦争という正当性を打ち出し参戦。しかし裏には、サイクスピコ協定などのオスマン帝国への野心、アラビアや、南太平洋のドイツ植民地の排他的影響力の獲得を方針にしていた。

アメリカの参戦目的
元来親英だったが、直接には無制限潜水艦作戦によりアメリカ船舶が被害を受けた事により「民主主義にとって安全な世界を作る」ことを目的に対ドイツ宣戦布告。しかし、深層には広い意味での帝国主義的目的があった。協商国との通商関係は活発だったため、協商国の勝利はアメリカの権益にかなっていた。


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