アドセンス2

2013年12月12日木曜日

【評/感想】 『ルパン三世 VS 名探偵コナン THE MOVIE』はアベンジャーズを超えた最強の祭り映画だ


愛には二種類ある。それは配慮と情熱だ。
前作テレビ版でのルパンVSコナンは互いの作品への愛ゆえに、気を使いすぎた感のあるものだった。そのために、両者の個性は出しきれず、うまく収まっているものの、小さくまとまり過ぎた作品となった。
しかし2つの作品はファーストデートを経て、本作『ルパン三世 VS 名探偵コナン THE MOVIE』では完全に愛を成就させた。お互いが余すところなく作品の魅力を出し、あるいはぶつけ合いながら、魅力を補強しあう。まるで、激しく濃厚なセックスかのように。

この映画とにかくゴージャスだ。手に汗握るアクションシーンの連続、しかも矢継ぎ早にシーンを転換し陸海空様々なところで観客を沸かせ、ギャグシーンも冴え渡り純粋に笑える。コナン史上最大のお祭映画であり、いわゆるファンムービーものとしてここまで観客を興奮させる演出を私は見たことがない。

それはひとえにルパンとコナンという作品の相性の良さと、脚本の前川淳氏の手腕によるものだ。
ひとまず前川淳がなぜこの作品を良くしたのかを論じたい。彼は東映アニメーションの作品を主に手がけているのだが、その中でも特に前川淳が光るのは過去作品を踏まえた新作ものだ。その代表は「デジモンアドベンチャー」と「デジモンアドベンチャー02」だ。
デジモンアドベンチャー02では、前作の主人公は兄貴立ち位置となりバックアップとして新主人公たちを支援する。新しいキャラクターたちを押し出しながら、霞まず、しかし出ずっぱらないという絶妙なバランス感覚で先輩キャラクターの造形をより深めた。このバランス感こそが本作を支えている。

この映画でのバランス感覚とは、ケレン味とハードボイルド。あるいシリアスとギャグだ。前者がコナンの、後者がルパンの持つ属性だ。
前作の評価がイマイチだが、本作が傑作となったのはコナンの世界にルパン三世がやってきたことによりメタ視点をルパンに託すことができたからである。
というのも、コナンというシリアスなキャラクターには、世界観を茶化すことは難しい、しかしルパンであったり次元大介がもつ一種の浮いた雰囲気はどの世界に入ることも容易く、そして背後にあるハードボイルドの世界観が彼らの言葉に説得力を持たせる。だからこそ、メタ視点が導入できたのだ。
「江戸川コナン、探偵さ」といったコナンに「それがお前の決め台詞か」と皮肉るようにいう次元。このシーンはその骨頂だ。

そしてメタ性はアクションにも及ぶ。この映画すべてのアクションシーンが素晴らしい。しかしそれは、脚本や演出の力量だけではない。映画冒頭満月をバックに不敵に微笑む怪盗キッド、ビルからのジャンプ、コナンが拳銃を持つ、好敵手と喧嘩しながらの飛行機の操縦、そうコナンファンなら分かるようにアクションシーンはどれもかつてのコナン映画の焼き直しなのだ。しかしメタ性と、イレギュラーな映画であるお祭り感に担保されることから既視感を抱かせない力を持つのだ。

これはコナン作品最高どころか、アニメ史、さらには映画史に残って欲しい一作だ。ある一箇所を除いては私は批判する場所を見つけられない。しかし、それがあろうとお釣りがくる。
今はひとつの集団のアベンジャーズも結成当時は、独立した作品を寄せ集めたものだった。コナンVSルパンはこの作品を経て、そういった高みへと登ったように思えてならない。これは日本国民にとってのアベンジャーズ的最高の祭り映画だ。

2013年12月8日日曜日

47RONINは良くも悪くも、いや悪い意味で普通


 キアヌ・リーブス主演、長編映画初挑戦のカール・リンシュがメガホンをとる今作。
江戸時代中期に起こった、赤穂浪士による吉良義央襲撃事件を描く忠義の物語「忠臣蔵」を大胆にハリウッド映画化!
監督自身は「ロード・オブ・ザ・リング」+「グラディエーター」だと評したり、「この映画はクスリをキメた黒澤明だ!」なんて言ったりしている。
(http://www.slashfilm.com/director-carl-erik-rinsch-describes-47-ronin-as-kurosawa-on-meth-on-set-interview/http://www.slashfilm.com/director-carl-erik-rinsch-describes-47-ronin-as-kurosawa-on-meth-on-set-interview/)
たしかになるほど、いう感じの凄まじいトレーラーに惹かれて私は劇場にむかった。

余談だが、一部では「外人の間違った日本観www」とかいう風にバカにされてはいるけれど、外人もそんなに日本のことを誤解しているわけでもなく、IMDbの掲示板を見ると彼らもイロモノ映画だと分かっている。「日本には未だに忍者がいると外人は思っているwww」なんて日本人は言っているが、実際はそんなことなく、それらはむしろ日本をそういう風に見てもらいたいという裏返しでしかないでしょう。
むしろイロモノとわかった上で楽しむ「300」的映画でしょう。また多分「魔界転生」なんかも意識しているのかもしれない。(あとはパイレーツ・オブ・カビリアンなんかも本当はこの映画と意図はおんなじなはず。)

少なくとも後者の楽しみ方で見ようと思ったこの映画だが、強烈なビジュアルとは裏腹にかなり地味なのです。いや、確かに忠臣蔵には普通現れないであろう。
モンスターであったり、

ダース・ベイダーというかシルバーサムライ的なキャラが


出たりしているのにスケールが小さい。

例えばシルバーサムライ。こんな見た目にも関わらず戦い方は普通のチャンバラ。殺陣自体はまぁまぁなのだが、陳腐な撮影も相まって結構ショボい。
ちなみにこの場面はさながら魔界転生の江戸城炎上シーンのように見えるのだが、実際は野焼き。しかも、広大な土地を焼くのならまだしも、せいぜい半径50メートルくらいしか焼けていない。CGを駆使しているのにもかかわらず、小さく収まっている感が最も感じられるシーンの一つだ。
見せ場のキアヌ・リーブスVSモンスターも、暴れまくるモンスターをキアヌがぶすっと一発打ち込むくらいなのでカタルシスがない。
総評的に述べればビジュアルの壮大さと、バトルのリアリティが全く異なっているのです。

さらにアクションでの最大の欠点は、侍映画であるのにもかかわらずフィーチャーされる対人戦がないのだ。対人戦が地味だからモンスターを出そうとなったことは分からないでもないが、この映画を見にくる人の一番期待する場面ってCGを駆使した超絶チャンバラだと私は思うんだよね。

まぁそれはあくまで忠臣蔵という物語を描きたかったという点もあるかもしれない。
それだけに、ツイッターなどで意見を見ていると「意外と忠臣蔵をしていてビックリ、割りといい映画だよ!」といった意見を目にする。
しかしだ!忠臣蔵という、仇討ちのストーリーはどんなにぶっ壊してもその骨組みは残るだろ!と言いたい。殿が殺されて、怒った家臣が吉良義央をぶっ殺せば大体忠臣蔵となるだろ!

47roninは確かに忠臣蔵のストーリーをちゃんとやっているけれども、はっきり言ってプラスα的要素はほとんどないし、なんだか小学校の学芸会レベルでの忠臣蔵のストーリーを追いかけている具合にすぎないので、再現をしていることが評価に繋がるというレベルには達していない。

かなりdissったものの、菊地凛子の妖艶な演技や、浅野忠信演じる吉良義央のうわーこいつ超嫌なやつだわ〜的表情は素晴らしい!
あとラストの47人が一斉に切腹をするシーンなんかはかなりカッコいい。
普通に楽しむことができる映画であることも事実。
とにかくド派手な絵面は映画館で見るのをおすすめします。