【評/感想】シリーズ史上最悪！この酷さは事件です！『名探偵コナン 異次元の狙撃手』

シリーズ最悪の出来と言わざるを得ない。名探偵コナン劇場版第18作『異次元の狙撃手』は、この映画自体が事件であるがごとき、凄惨な作品だった。この惨たらしい事件をコナンに変わって、なぜこんなにも酷いものが出来てしまったのか解決していこう。

今回の映画はFBIが絡むことと、ファン層の高年齢化も相まって従来と比較してシリアスな映画を目指している。都市での狙撃事件ということで『ダーティ・ハリー』的テイストがあり、容疑者ティモシー・ハンターらメインストーリーに絡むキャラクターたちはイラク戦争に出兵したネイビーシールズという設定になっている。

長期シリーズ作品は、キャラクターを使って自由にテーマを描くことが出来るというメリットがあり、『異次元の狙撃手』の試み自体に私は全く文句はないが、キャラクター、テーマの両方が今回のコナン映画では全く描いていない。

キャラクター面では、主人公コナンの描き方が本当に酷い。今回のキーパーソンである世良真純がコナンのせいで重症の大怪我を負ったにも関わらず、彼は全くもって素っ気ないお見舞いを済ませたかと思えば突如全く別のことをし始める。その自己中心さは館内が唖然となるほどだ。

また、細かいことではあるがFBIのジョディ・スターリングとアンドレ・キャメルの車での移動シーンにおいて、本来運転テクニックが優れているキャメル捜査官が助手席に座り、拳銃の名手であるジョディが運転し、そのまま敵地に乗り込むということもあった。

そういった細かな違和感がコナン映画としての醍醐味を完全に削いでいる。

より重要なのは監督、脚本がともにFBIやアメリカというテーマを全く描けていないことだ。

本作では、アニメ映画では珍しく外国人キャラクター同士のやりとりは大方英語で描いている。だが全てという訳ではなく、大方なのだ。外国人同士は必ず英語という訳ではなく、場面によって異なっている。

英語の独り言を語っていたハンターが、次の場面では同じ外国人であるケビンと日本語で話しているなど全く規則性が読めない。この訳の分からないコードが、クライマックスまで貫かれているため興ざめになってしまう。

また、プロットの組み立て方が杜撰を極めている。

都市部での狙撃事件ということをマスコミがセンセーショナルに報じ、ネットを賑わすシーンがある。（これ見よがしに、映画館でニコニコ動画の文字フローを長々と見せるこれ以上ないクソ演出だ）

しかし、その挿入場面が明らかにおかしい。FBIと警察の捜査では、容疑者が恨みを持っている相手を順に殺していっていることが明らかに分かっている状態で、「無差別」だと勝手に断定されてしまっている。

風説の流布という演出をしたいにすれば本来、観客にも全貌がわかっていない段階で挿入すべきシーンだったに違いないだろう。

さらに、このシーンの意味不明さはそれに留まらない。風説流布の結果、一般人は混乱し、狙撃されないよう傘をさしたり（意味がわからない！）、地下街に逃げ込むといったパニックが起きる。しかし、そのパニックは物語の本筋とは「一切」関わらない。

そう、この一連はすべて映画に必要ないのだ。

ストーリーも一本道で推理的な面白みに欠けているし、ベルツリータワーで行われるクライマックスも『漆黒の追跡者』でやったことの焼き直しにすぎない。

私はコナン好きの友人と見に行き、面白かったところを挙げてみた。しかし、一つとして出てこなかった。

この映画はそれだけ酷い。

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