アドセンス2

2013年10月15日火曜日

第九地区はまぐれだったのか!? 『エリジウム』に超ガッカリ


遅ればせながらエリジウムを観てきました。(10/14@バウスシアター)

SFには現実問題を寓話化できる機能を備えている。ニール・ブロムカンプ監督は前作『第九地区』でアパルトヘイト問題を、地球人による宇宙人への差別に落としこみ、社会に対する批評性を持ちながら、娯楽としても文句なしの名作を作り上げた。

前作の成功から5倍もの予算を獲得し、ブロックバスター作品として満を持して登場したのが『エリジウム』だ!

板野サーカス(マクロスシリーズのようなミサイルの弾道)を描くようなオタク気味の監督にビッグバジェットを得たのならすごいものが観られるはずだ!予告編では前作で見せたような荒廃都市、その対極に置かれるガンダムのコロニーのような宇宙住居エリジウム。クオリティ、規模が第九地区を大きく上回る本作に期待を抱かずにはいられなかった。個人的にはパシフィックリムを超えるのではないかなんて思ってもいた。

感想を端的に言おう、
超駄作!!!

2145年地球は荒廃し、富裕層(エリート)は宇宙コロニーに移住していた。工場での事故で致死量の放射線を浴びて、余命5日と宣告されたマックス(マットデイモン)はコロニーにある医療装置(どんな怪我でも、病気でも治る!すげー!)を求めてエリジウムに乗り込むために奮闘する。

アメリカの医療格差問題、経済的な南北問題、オキュパイウォールストリートなどを意識し、そのような不公平さを寓話化しようという試みは一定の成功を収めている。しかし、いまさら富の偏りを訴えられても「それで?」という感想を抱いてしまう。あまりにも自明すぎるのだ。
そして第九地区ではアパルトヘイトを受けた黒人が宇宙人を差別するという構造が面白さがあったのだが、そのような凝った設定もない。
はっきり言って、これくらいの社会問題の提起なら中学生がノートに書く漫画だって可能だ。

そして残念な事に前作でのもう一つの核だった、娯楽性がこの陳腐なテーマを語る為に大幅に損なわれてしまっている。
この映画の肝となるガジェットの一つがパワードスーツだ。攻殻機動隊のような神経接続をし、半電脳化のような仕様なのだ。とても魅力的なこのパワードスーツがストーリー上の大きな障害になっている。

マックスは放射線を浴びたことにより、生体機能が大幅に弱体化したためこのスーツを武器に闘うのだが、のちに敵に捉えられ映画を盛り上げるためのピンチを演出しなければなる宿命を持つ。故に強すぎても、弱すぎてもいけない。
なのでかっこいいメカを着込んでいてもケンカパンチ&ケンカキックで一般兵と延々闘う。撮影も単調なので、とにかく退屈で面白みがない。前作の、半宇宙人となった主人公が宇宙人専用武器を一人つかってチート級の強さを見せたような爽快感はかけらも残っていない。

脚本の為に意図的に設定を陳腐化させているのは、このパワードスーツだけではない。至るシーンに現れているし、大落ちもどうようのガッカリ感が存在する。
それについてはいつか追記しようと思う。

そうは言ってもエリジウムの全体のデザインはすばらしい。
しかしこれも監督よりは、ターンエーガンダムやブレードランナーをデザインした天才プロダクトデザイナーのシドミードに負うところが大きい。

娯楽性というか、鑑賞に耐えられるレベルの作品でもないのにコンセプトやメッセージを叫ばれたってそれはウザイだけだ。単純に楽しめる映画を作れる監督だと僕は信じているので、次回はエンターテインメント第一に作品を作ってほしい。

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